補血の漢方薬

　病院の血液検査では、正常範囲内だけど、どの項目も、基準値のギリギリ下の方のレベルという場合は、手足が冷えたり、生理の量が少ない、頭痛がする、貧血のような症状がでます。治療するレベルではないけど、早いうちに改善しておくと、未病の予防や将来の妊活につながります。今回は、補血の漢方薬についてお話します。

血虚（けっきょ）とは？
　血管の中を流れる赤い血液が足りない、または働きが弱い状態のことです。血はカラダを作るための材料を各細胞に運びます。血液の量、赤血球の数、血圧（心臓のポンプ力）などが合わさって、体の隅々まで栄養を運んでくれています。血管の長さは、小さな血管も全てつなげると地球を2周半する長さ（10万キロメートル）もあります。細胞に酸素と栄養素、ホルモンを運搬するほかにも、免疫や体温の調節もしています。これだけの仕事をしている血液が不足した状態（血虚）を放置していると、様々な病気の引き金になってしまいます。

血虚の主な症状は？
　体の端っこにある頭部・皮膚・髪の毛・爪などは、血液が行き届きにくいので、血虚の症状がでやすい場所です。頭痛がする、顔色が青白い、手足が冷えたり、皮膚のかさつき、爪が割れる、二枚爪、髪がパサつく、抜け毛がふえる、白髪がふえるなどの症状が出てきます。

血虚の症状が出る場所で漢方薬を選んでみよう
・頭部の血虚（頭がふらつく・集中力がない・眠りが浅い・気分が落ち込む）
　頭部の血虚が進むと、脳が栄養不足状態になり、頭がぼーっとする、頭がふらつく、めまい、物忘れ、集中できない、思考力が低下する、睡眠が浅くなるという症状がでてきます。
「聞いたときはわかったつもりだったのに、すぐに忘れてしまう」とお悩みの方もいるかと思います。これも、血虚の症状ですね。脳が栄養不足なので、記憶する脳もお仕事が１００％できないのも、仕方のないことです。頭部の血虚が気になる方には、漢方相談の際には、大切なことはメモにしてお渡しするようにしていますので、ご安心ください(^^）

→頭部の血虚に、おススメの漢方薬は？
①人参養栄湯（にんじんようえいとう）
　補血をして血行を良くするのと同時に、胃腸調子もととのえることで、栄養をすみずみにいきわたらせ、「気」も補う漢方薬です。「気」が増やすことで、補血作用もより強くなります。寝つきがよくなり、体がととのうのが早くわかる漢方薬です。疲れると胃腸に来るという方にもおすすめです。
②上記の症状に加えむくみがある人→当帰芍薬散（とうきしゃくやくさん）
　補血をして血行を良くするのと同時に、水分代謝を整えることで、余分な水分を体からとり除き、むくみ、めまい、耳鳴りも改善していきます。

・目の血虚（目の乾燥・目の疲れ・目の痛み・涙目）
②「肝は血を受けてよく視る」と言われ、目は肝に蓄えられている血の栄養が目に届くことにより、目はしっかりと見える状態になります。血虚になり目に栄養が届きにくくなると、目がかすむ、目が乾燥する（ドライアイ）、目が疲れる、まぶしく感じる、目が痛む、目がしょぼしょぼするなど、さまざまな目のトラブルが起こりやすくなります。ヒアルロン酸入りの目薬を入れても改善しないという方は、血虚の改善も同時にしていくと良いですね！
・目の血虚におススメは？
①アイリタン（鯉胆エキス食品）
　鯉の胆・真珠貝・八つ目うなぎ・菊花・田七人参など目に良い栄養分を錠剤にしたサプリメントです。
②年齢とともに耳鳴り・高血圧もでてきた方人→七物降下湯（しちもつこうかとう）
　「気」と「血」を増やし、めぐりを良くすることで、頭重・耳鳴り・高血圧・目の充血を改善していく漢方薬です。

・皮膚の血虚（肌艶が悪い・顔色悪い・皮膚の乾燥・皮膚のかゆみ）
　顔色は血流によって大きく変わります。血虚になり血の量が不足すると、赤色要素が少なくなり、顔色が悪くなります。また、血虚により皮膚に栄養が届かなくなると、肌の艶がなくなる、乾燥する、かゆみが出るなどの皮膚トラブルも起こりやすくなります。
　老化による皮膚の乾燥や皮脂の分泌の低下によって「かゆみ」を生じる「老人性皮膚そう痒症」。ステロイド剤と保湿剤で改善はするけど、完治はしない、、、という方は、血虚の改善も同時にしていくことで、皮膚にしっかり栄養分が運ばれるようになり、皮膚そのものが丈夫になっていきます！
・皮膚の血虚におススメな漢方薬は？
①当帰飲子（とうきいんし）
「血」を補給するし、「気」を補う生薬やかゆみを止める生薬を配合した漢方薬です。肌に栄養分とうるおいを与え、乾燥肌を改善します。
②血虚の症状のない場合の皮膚の乾燥には→黄耆建中湯（おうぎけんちゅうとう）
　体表（皮膚）の血行を改善することで、皮膚への栄養補給を促します。その結果、皮膚の潤いがでてきて、新陳代謝がよくなります。